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チック

チックとトゥレット障害
チックとは突然起きる体の不随意な運動や発声で、瞬きしたり、首を揺すったり、肩をすくめたり、顔をしかめたり、唾を吐いたりといった動作をする「運動チック」と、咳払いしたり、鼻を鳴らしたり、奇声を発したりといった音をたてる「音声チック」がある。また、卑猥な言葉や罵り言葉を叫んでしまう「汚言症」や状況と無関係に決まり文句を繰り返す場合もある。運動チックだけでなく音声チックが頻回に起こり、一年以上持続しているものを「トゥレット障害」と呼ぶ。この名称は、ジル・ド・ラ・トゥレットというフランスの医者がこの病気を最初に記載したことに由来する。
一割から二割の子どもにチックはみられると言われ、六〜七歳でもっとも多い。大部分は一過性で、一年以内に自然に消えるが、トゥレット障害では回復にやや手間取る。
 チックはストレス性の要因が強いが、トゥレット障害では遺伝的要因が大きく、胎生期やストレス性の要因も関与している。

【ケース】 反抗する体
施設に入所中の小学六年生の男の子である。小学一年の頃から瞬きする仕草を繰り返すようになった。一旦治りかけていたが、父親が家に余り戻らなくなった小学三年頃からまたひどくなり、顔をしかめ、肩を揺するといった動作も加わった。最近では、「クソッ」とか卑猥な言葉を口走る。行動は落ちつきなく、目もきょろきょろと定まりなく動いている。乱暴な行動もある。施設への入所は、それが直接のきっかけだった。
いいところのお嬢さんだったという母親がやってきて、熱心に説教するたびに、頷きながら聞いている。母親の前では別人のようにいい子に振る舞おうとするが、母親の要求と子どもの現実には、だいぶギャップがある。母親の帰った後で、必ずチック症状が悪化する。

【症状の類似する疾患】
チックと紛らわしてものとして、常同運動障害、広汎性発達障害でみられる常同運動、強迫性障害に出現する強迫行為がある。音声チックは、統合失調症の独語と似る場合もある。不随意な運動は、舞踏病、脳炎後遺症などによる脳性麻痺、レッシュ・ナイハン症候群、多発性硬化症などの身体疾患や安定剤などの薬物の影響によってもみられる。

【対応と治療のポイント】
大部分のチックは、一過性におさまっていく。過度に意識するとかえって治らなくなる。したがって、最初のうちは、周囲の者はできるだけ気にしないようにするのがよい。余分なストレスがかかっている場合には、それを減らす。回復が鈍い場合には、他の疾患の可能性がないかを検査した上で、生活に支障が大きいときは、行動療法や薬物療法を試みる。
トゥレット障害には、リスペリドンやアリピプラゾールなどの投与などによる薬物療法が効果的である。

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